9人が本棚に入れています
本棚に追加
日が暮れると、あたりは真っ暗闇になった。
「すごい……。神秘的だよね。さすが霊山……」
「霊山関係ないと思うけど」
都会育ちの樹里の呟きに、私が突っ込んだ。
とはいえ、私も都会育ち。
山奥だから当たり前の景色なのかもしれないけど、都会ではありえない暗闇にちょっとドキドキする。
灯りといえば、私たちが灯しているLEDのランタンくらい。
近くに家族連れはいるものの、広いキャンプ場に使用者はたったの4組だから、道路一本分……3mくらい離れているから全然気にならなかった。
見上げると、満天の星空が広がっていた。
都会では街の明かりで分からないけど、夜空にはこんなにも星が輝いているんだと改めて気付かせてくれる。
「あ、流れ星!」
すうーっと目の端を光の線が横切った。
「え? どこ、どこ?」
一緒に星空を眺めていたけれど、樹里は気が付かなかったみたい。
「奈津、何かお願いごとした?」
「ん……」
私のお願い事は、いつだって同じ。
もう12年も前になる。
あの日約束したお婆ちゃんの言葉を伝えたいから。
次郎さんに会えますように。
次郎さんに会えますように。
次郎さんに会えますように。
この一択だ。
でも、お母さんの亜紀も次郎さんになんて会ったことがないって言ってた。
一体、どんな人なのかな?
お婆ちゃんは「なっちゃんなら会える」と断言してたけど、本当かな。
大体、その人、いくつよ。
お婆ちゃんと同じくらいなら、もう死んでいるんじゃないの?
最初のコメントを投稿しよう!