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昼間に拾っておいた枝を組んで、液状の着火剤をかけると瞬く間に火がついた。
「焚火って癒されるよね」
「本当。焚火の動画が流行る理由、分かる気がする」
ぱちぱちと爆ぜる焚火をしばし眺めた後に、その焚火で花火をつけた。
「綺麗」
お盆過ぎての3割引きの花火だけど、全然いい。すごく綺麗。
少し離れた所でも「きゃー」「きれーい」と可愛らしい子供の歓声が上がっていた。
どうやら私たちのその向こう、三組の家族連れも花火を始めたようだ。
赤青緑黄色に白、様々な色の炎が遠目からでも分かる。
「おー、向こうは景気いいこと。花火の量が違うねえ」
樹里が大袈裟に手をかざして向こうを眺めた。
「そりゃ、家族連れだもんね」
お盆を過ぎての家族サービス。
夏の最後の思い出にと、お父さんお母さんが大奮発したんじゃないかな。
暗闇の中に浮かぶ子供たちの無邪気な笑顔が、花火に照らし出され、遠目でも分かった。
「あ、ねえ。見てよ、奈津」
不意に樹里が、山の中腹辺りを指さした。
「さすが霊山だね。白い服の人が並んで歩いている。あの人たちは、現代の修行者かな?」
「え……」
私は指さした方向を見つめた。
どんなに目を凝らしても、真っ暗な山のこんもりとした木々しか見えない。
「やだ、やめて。樹里」
知っている。
樹里は霊感体質だ。
普通の人には見えないものが見える。
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