1章 久保手山レポート事件

7/17
前へ
/71ページ
次へ
 突然、辺りが閃光に包まれた。 「きゃああぁぁ!」  思わず、樹里も私も向こうの家族連れさえも叫んでいた。  次に目を開けた時には 「え? 火事?」  辺り一面、火が上がっていた。  確かに流れ星がこっちに向かって落ちてきた気がしたけど、そんな衝撃なんてなかった。 (じゃあ、一体、何がどうしてこの火の海?)  濛々と猛る火は、家族連れの方からだった。 「花火に引火したんだ!」  樹里が叫ぶ。  流れ星が落ちてきたような気がしたけど、実際にはそんなことはなかった。  ただ、驚いた子供たちの持っていた花火の火で、横に置いてた大量の花火に引火したんだと分かった。  次につけようと思ってた手持ち花火にねずみ花火。カラフルな煙幕を上げる花火に30連発の簡易打ち上げ花火。  集めておいていたものだから、全てに次々と引火されていく。さまざまな色の炎や煙を壮絶に噴き上げていた。  バチバチと激しい音を立てたかと思ったら、ロケット花火が一斉にひゅんひゅんと様々な方角に飛んで行く。引火のタイミングの読めなさと、避けようのないスピードにすっかり凶器と化したロケット花火に子供も大人も怯え、パニックに陥った。 「いやー!」 「きゃー!」 「早く、消してっ!」  悲痛な叫びと共に子供は逃げまどい、お母さんは小さな子供を抱えた。用意していたバケツの水で消火に当たるお父さん。  でも、そんなんじゃいっぺんに火が付いた花火の勢いは衰えない。  三組の家族連れが恐怖で叫び、泣いて逃げまどっていた。  さっきまでのほのぼのとした夏の思い出が、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図に代わってしまった。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加