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突然、辺りが閃光に包まれた。
「きゃああぁぁ!」
思わず、樹里も私も向こうの家族連れさえも叫んでいた。
次に目を開けた時には
「え? 火事?」
辺り一面、火が上がっていた。
確かに流れ星がこっちに向かって落ちてきた気がしたけど、そんな衝撃なんてなかった。
(じゃあ、一体、何がどうしてこの火の海?)
濛々と猛る火は、家族連れの方からだった。
「花火に引火したんだ!」
樹里が叫ぶ。
流れ星が落ちてきたような気がしたけど、実際にはそんなことはなかった。
ただ、驚いた子供たちの持っていた花火の火で、横に置いてた大量の花火に引火したんだと分かった。
次につけようと思ってた手持ち花火にねずみ花火。カラフルな煙幕を上げる花火に30連発の簡易打ち上げ花火。
集めておいていたものだから、全てに次々と引火されていく。さまざまな色の炎や煙を壮絶に噴き上げていた。
バチバチと激しい音を立てたかと思ったら、ロケット花火が一斉にひゅんひゅんと様々な方角に飛んで行く。引火のタイミングの読めなさと、避けようのないスピードにすっかり凶器と化したロケット花火に子供も大人も怯え、パニックに陥った。
「いやー!」
「きゃー!」
「早く、消してっ!」
悲痛な叫びと共に子供は逃げまどい、お母さんは小さな子供を抱えた。用意していたバケツの水で消火に当たるお父さん。
でも、そんなんじゃいっぺんに火が付いた花火の勢いは衰えない。
三組の家族連れが恐怖で叫び、泣いて逃げまどっていた。
さっきまでのほのぼのとした夏の思い出が、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図に代わってしまった。
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