友愛と自己犠牲

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友愛と自己犠牲

 扇風機の首を振ることで自分以外の仲間にその風の涼しさを分け与え共有することが出来る。 これは友愛の意思を示し、そして自らの扇風機がよその方向を向いている間、当人はその灼熱の神に我が身をゆだねるという、犠牲と勇気の証しを示す行為となるのだ。 長老は声高に語る。 さらに村で一番長く首を振らせることの出来る者は勇者と呼ばれ、その者だけは扇風機の首をさらに伸ばすことも許される。 この首の長さこそより遠く、より多くの仲間達に自分の風を送り届けることができるという力の証しでもあるのだ。 故にモパパ族にとって扇風機の首を長くする行為は最大の地位と名誉が約束されるのである。 このため古くからこの灼熱の大地の熱波を耐え抜くことが、自己犠牲を厭わない勇敢なモパパ族の男達によって競われ、結果多くの者が命を落とし散っていった。 17世紀から19世紀におけるユーロッパ 人侵略の際も彼らの先祖達は扇風機を守り闘った。多くの犠牲の中でタフリカの羽根は守られたのである。
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