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「これ・・・全部面接するんですか?」 私のデスクの前で、中途採用担当者の男の人が驚いた声を上げた。 私のデスクの上には大量の履歴書と職務経歴書があるから。 「はい・・・。ごめんなさい・・・。 私は・・・お会いしないと分からないので・・・。」 「・・・あ、すみません! 驚いただけで!! もしかして、応募者全員と面接するんですか?」 そんな当たり前のことを聞かれ、頷く。 「ごめんなさい・・・。 私は、お会いしないと分からないので・・・。」 そして、両手に持った履歴書と職務経歴書の束・・・束どころか鈍器にもなりそうなくらいの重みの物を、男の人に渡す。 「日程調整はやってくださると聞いていますので・・・お願い出来ますか・・・?」 「はい・・・。 1人につき30分くらいですか?」 「1人10分もあれば・・・。 なので15分間隔で入れてください・・・。」 「・・・分かりました。」 「夜や土日にしか来られない方もいらっしゃるので、全て対応します・・・。」 男の人が驚いた顔で私を見ているので、慌てて下を向く。 「本当に大丈夫ですか・・・? 部長からは、派遣の方なので無理させないようにと言われていて・・・。」 「・・・無理ですか? 全然無理していませんので、ごめんなさい・・・。 うちの会社では、これが当たり前だったので・・・。」 「・・・ブラックですね。 だから、急成長出来ている企業なんでしょうね。」 こんな大企業中の大企業、藤岡ホールディングスに就職出来た男の人がそんなことを言ってくれる。 「うちの人事部のことも、よろしくお願いします。」 そう言って、派遣の私にも頭を下げた・・・。 私みたいな女に・・・。
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