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「とりあえず、もう向いましょう。長居してしまったから早くしなくては記憶がなくなってしまう。」
無駄にクールに振る舞う自分が嫌で嫌で仕方ない。
「そうだね、エリアスの言う通り。それじゃあ、またねリリー。」
そういうとルークは椅子から立ち上がる。
私もルークと同じように立ち上がって椅子をもとに戻した。
「ええ、シャーロットは行けないの?お兄ちゃん.......。」
「ここからは辛い旅になるかもしれないだろう?だからリリーはここに残っていて。」
ルークはそう言い、リリーをよしよしと撫でる。
リリーは不満気だが仕方ないと諦めたらしく、気をつけてねと私たちに言った。
「エリアス、さあ行こうか。」
「___あ、ちょっと待って!」
リリーは私たちを引きとめると、
何かを思い出したように言った。
どうやら今度は一緒に行きたいから、というわけではないらしい。
「どうした?」
ルークは声をかける。その声をお構いなしに
リリーは二階への階段を駆け上がった。
思い立ったらすぐに行動に移すところあたりリリーはやっぱり子供である。階段はなかなか年季が入っているようで、キシキシという嫌な音を立てた。
いつか底が抜けるのではないかと心配になる。二階で何やらガサガサと物を漁るような音がして、止んだと思ったら再び階段を駆け降りる音がした。
「エリアス!これ、あげる!」
リリーはそういい、小さく柔らかそうな右手を差し出す。
私は両手でリリーが持っていたものを受け取った。それはペンダントのようなものだった。よく見ると名前が彫られているようだが、文字が消えかけていてなんて書いてあるのか分からない。
「これは......ペンダント?」
「そう!エリアスを護ってくれるおまじないがかかってるんだよ!シャーロットからのプレゼント!」
リリーはえへへと無邪気に笑っている。
ルークはなんだか余計なことをするなと言わんばかりの表情を浮かべる。
「ありがとう、リリー。私記憶を必ず取り戻せるように頑張るね!」
「急ぐんでしょ、エリアス。さ、行こう。」
ルークは淡々と流れるようにそう言い、私とリリーに背を向け、ドアの方へ歩きだした。なんだか冷たいなと思いつつルークの後を追い、ドアの方へ足を運んだ。
「......そうだね。そうだよね!早く行きなよエリアス!また会おうね。きっとまた会えるから.....。」
リリーはそう言い惜しそうに軽めに微笑んだ。なんだかそのまま死んでしまいそうな儚い笑顔だった。
私はまた会えるから待っててね、と確証のない約束をした後、軋んだ音を立てる古びたドアから外へ出た。
キキキ....と痛みを訴える悲鳴のような音を立ててドアは閉じた。
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