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外は真っ赤に染まっていた。
見渡す限りに広がるのは紅葉。
思わず目を見張るような景色だった。
綺麗というそんなありきたりな言葉だけでこの美しさを表現することはできないに違いない。
ひらりひらりと紅葉が舞い落ちる。
そこにそびえる木々は不規則に風の吹くまま揺れていた。
なんて綺麗なのだろうか。
私、ずっとここにいたい____
「エリアス」
ルークは感傷に浸る私を現実に引き戻すように声をかけた。
左右対称に整った深い緑の目、首あたりで切り揃えられた控えめに輝く銀髪をもつその少年は、出会った場ばかりのように皮肉めいたことを言うような苦々しい表情を浮かべて唇を強く噛み締め、絞りだすように言う。
「君にとって幸せとはなんだ」
幸せ___か。幸せってなんだろう。何ひとつ欠けることなく完全な状態でいられること?その答えをだす前にルークは続けて私に問う。
「エリアス、君は生きていたい?」
生きていたい?私、私__は、私は___
「わからない」
今の私は生きているのかいないのか。
それさえもわからない。
生きていても死んでいてもどちらでもいい。
どちらでもいいのではないか。
たとえ今死んでいたとわかったとして何も思うことなどない。だとしたらなぜ私は泣いているのだろうか。
私はこの現象に名前をつけることができないくらいには自分を見失っていた。
「私、は__」
「エリアス」
私が今できる精一杯で震える声をだした直後、指と指を重ね合わせるようにしてルークに手を取られた。その瞬間、何かが私のなかに入りこんだような感覚を覚えた。
「目を閉じて、安心して__僕は君のそばにいるから。絶対に離れたりしないから__。」
何かが私のなかに入りこむ。あたたかいような寂しいような不思議な感情を覚えた。心地ような気もするがなぜだかぞわり、と背筋に寒気が通った。怖くはない。むしろ安心する。なのに拭いきれないこのぱっとしない気持ちは__。
「.......うん。ありがとう、ルーク。私も離れないわ......。」
「..........ごめん。」
「どうして謝るの、ルーク?」
「......僕は君を不幸にする。」
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