記憶探し

3/12
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
私が返答に困っていると、ルークは私の様子を伺った。有無を言わさず、ルークはせっかくだから、と今来た道を引き返して例の少女のもとへ、向かう。ここまで足を運んできたと言うのにまた引き返すのか。 「ルーク、なぜ私の名前を知っていたの?」 こんな不思議な森の住人だから、って言う理由で試しに聞いてみただけだったのにルークはあっさりと答えたのが気がかりだった。 この森は、普通じゃない。 普通じゃない森に住まうルークはきっと、人間ではない。何かを知っているかも知れない。そう思っていた。 「君は知りたがりなのかい?僕はそんな君が不思議でならないよ。」 調子の良い声で話すルーク。 「どうして?興味を持つ私は、そんなにおかしいの?」 「簡単な話さ。要は世の中は知らない方がいいことだらけ、ってわけだ。」 妖しく笑うルークに、私は何故か、どこか懐かしい気配を感じた。やっぱり信用してはいけないのかな、と不安に思ったが、私には今、頼れる人が他にいない。 ルークはこの摩訶不思議な森で 初めて出会った住人なのだから。 ***** 暫く話し続け話題が尽き、沈黙が続いた頃__ だいぶ時間が経ったような感じがする。 「ねえ、どこまで行くの?」 静寂を破ったのは私の声だ。 ルークの知人に会う、と言う目的で歩き続けてどれくらい経ったのか、皆目見当もつかないが、気づけば見渡す限り、さっきとは違った場所に来ていた。 「さあね。この森の管理者である僕だけど、実は方向音痴なんだよね。」 なんて能天気な考えだ。本当にそんな調子で無事に着くのだろうか、と心配したがそれを察したように大丈夫、とりあえずあそこの泉まで行こうかと微笑みかけられた。 「あれは___」 「___エリスの泉さ。」 私が口に出した言葉を遮り、ルークは重ねるように言った。 「さ、近くで見てごらんよ。純度が高くて、底までよく見えるだろう?かなり綺麗だと思うんだ、ここは。僕のお気に入りの場所さ。」 話を続け、ルークは私が息を呑んだのをみると可笑しそうに笑った。 「いいね、その顔。」とでも思っているのだろうか。ルークはニヤニヤと人をからかうような目つきをしていた。 そんな仕草を見ていると、段々とルークに対しての疑いの目は晴れていった。 「つまんないなあ。もっと面白い反応してくれてもいいだろう?__エリアス。」 「私に面白さを求めないでよ…」 無感情に見える私に構って何が楽しいのだろうか。でも、段々話すうちにルークが普通の人間のようにみえてきた。話しやすいと言ったらそうだ。 ルークは胸から瓶を取り出し、泉の水をすくう。 「ほら、飲んでみたら?」 ルークはそう耳元で囁くが、いくら純度が高いと言えど、そのまま飲むのは衛生面的にどうなんだろうか。それと耳元で話すのは本当に勘弁してほしい。理由は察してほしい、とだけ言っておこうか。 「遠慮しとこうかな。ほら、私喉乾いてないし。」 ルークはまた見透かしたようにふふ、と優しく笑っていた。 「それは、嘘。ほら衛生面もバッチリだよ?」 ____なんでルークは 私の考えてることがわかるんだろう。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!