23人が本棚に入れています
本棚に追加
またか、とエリアスは思った。
やはり、ルークは人の心が読めるのだ。
「.......ねえ、ルーク。あなたさっきから、私の心読んでいるでしょう?」
ルークは硬直し、目を瞬かせる。
____当たりか?
「あーあ、ばれちゃったなあ。もう少し隠しつつ話せばよかった。」
ルークは悪戯がバレた子供の如く、舌を出した。
「あーあ、じゃないわよ......。なんで黙ってたの?」
ルークのせいで私は結構驚かされたのだ。
これくらい問い詰めても怒られはしないだろう。
「楽しかったから、?」
私から聞いたのに、
気づけば質問される側になっていた。
「私に聞かないでよ......」
なんで本人が理由をわからないのだろう。
「そろそろ行こうか。ここに長居してもどうしようもないからさ。」
ルークはコホン、と軽く咳払いをすると出発しよう、と促した。
「そうね。少し、水を汲んで行ってもいい?ルーク。」
「ああ、どうぞ。沢山汲むといいよ。これから水のないところを歩くことになるからね。」
どうやらこの先には水を飲める場所はそうそうないらしい。私は深い泉の水をそっと瓶の中に汲む。ありがたい水だ。
「そうなのね。この先はまた景色が変わったりするの?」
ルークはそうだな、とでも言うように考えている。
「その通り、さ。勘がいいな。もしかすると__この森の“力"が、働いているのかも。」
この森の力が働いている?
どういう意味なのだろう。
この幻想的な森には人知を超えた超常的な力が働いている、とでも言うのか。そうであったとしても信じられない、とは微塵も思わない。この森の存在自体が信じられないものであるからだ。
「どういう意味?この森はやっぱり、普通じゃないのね。」
ルークの言っている意味が、分からなかった。
「そうだよ。前に話しただろう?この森から出られなくなってしまった少女の話を。」
その話なら、知っている。この幻想的な森を理想郷だ、と謳った少女の話のことだ。
「つまり、その話の少女にも、この森の“力”が働いたってこと?」
ルークは満足そうにニコリ、と笑って言う。
「ご名答。エリアス___君にも同じように、この森の“力"が働いているってことなんだよ。」
力が働いていると、どんなことが起こるのだろう。例の少女のように、私は森から出られなくなってしまうのだろうか。
「私はもう、この森から出られないの?」
私はふと、出られなくなっても構わない、と思ってしまった。あまりにも美しい景色だからか?
「この森にいたい、か。それもいいんじゃないかな?」
可愛らしげな声でそう言い、
ルークは頬に手を当てた。
「心読まないでよね、ルーク。こんな幻想的な森にいられたら素敵かもなあ、って少し思っただけよ。」
ふうん、とつまらなそうな声をあげてルークは後ろから、私を優しく抱きしめた。
「僕は、エリアスにこの森にずーっと、いてほしいんだけどなあ。」
冗談じゃない、と言おうとしたが初めて見るルークの弱い一面に驚いて声が出せなくなった。それよりも急に後ろから抱きしめられたことの方がびっくりした。
最初のコメントを投稿しよう!