記憶探し

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またか、とエリアスは思った。 やはり、ルークは人の心が読めるのだ。 「.......ねえ、ルーク。あなたさっきから、私の心読んでいるでしょう?」 ルークは硬直し、目を瞬かせる。 ____当たりか? 「あーあ、ばれちゃったなあ。もう少し隠しつつ話せばよかった。」 ルークは悪戯がバレた子供の如く、舌を出した。 「あーあ、じゃないわよ......。なんで黙ってたの?」 ルークのせいで私は結構驚かされたのだ。 これくらい問い詰めても怒られはしないだろう。 「楽しかったから、?」 私から聞いたのに、 気づけば質問される側になっていた。 「私に聞かないでよ......」 なんで本人が理由をわからないのだろう。 「そろそろ行こうか。ここに長居してもどうしようもないからさ。」 ルークはコホン、と軽く咳払いをすると出発しよう、と促した。 「そうね。少し、水を汲んで行ってもいい?ルーク。」 「ああ、どうぞ。沢山汲むといいよ。これから水のないところを歩くことになるからね。」 どうやらこの先には水を飲める場所はそうそうないらしい。私は深い泉の水をそっと瓶の中に汲む。ありがたい水だ。 「そうなのね。この先はまた景色が変わったりするの?」 ルークはそうだな、とでも言うように考えている。 「その通り、さ。勘がいいな。もしかすると__この森の“力"が、働いているのかも。」 この森の力が働いている? どういう意味なのだろう。 この幻想的な森には人知を超えた超常的な力が働いている、とでも言うのか。そうであったとしても信じられない、とは微塵も思わない。この森の存在自体が信じられないものであるからだ。 「どういう意味?この森はやっぱり、普通じゃないのね。」 ルークの言っている意味が、分からなかった。 「そうだよ。前に話しただろう?この森から出られなくなってしまった少女の話を。」 その話なら、知っている。この幻想的な森を理想郷だ、と謳った少女の話のことだ。 「つまり、その話の少女にも、この森の“力”が働いたってこと?」 ルークは満足そうにニコリ、と笑って言う。 「ご名答。エリアス___君にも同じように、この森の“力"が働いているってことなんだよ。」 力が働いていると、どんなことが起こるのだろう。例の少女のように、私は森から出られなくなってしまうのだろうか。 「私はもう、この森から出られないの?」 私はふと、出られなくなっても構わない、と思ってしまった。あまりにも美しい景色だからか? 「この森にいたい、か。それもいいんじゃないかな?」 可愛らしげな声でそう言い、 ルークは頬に手を当てた。 「心読まないでよね、ルーク。こんな幻想的な森にいられたら素敵かもなあ、って少し思っただけよ。」 ふうん、とつまらなそうな声をあげてルークは後ろから、私を優しく抱きしめた。 「僕は、エリアスにこの森にずーっと、いてほしいんだけどなあ。」 冗談じゃない、と言おうとしたが初めて見るルークの弱い一面に驚いて声が出せなくなった。それよりも急に後ろから抱きしめられたことの方がびっくりした。
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