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「そうだね.......僕もそう思ってるさ。この世界に森が誘い込んでいるような、そんな気がするよ。___さあ、そろそろお話は終わりにしようか。目的地に到着したよ。」
あっという間に到着したようだ。
この森から出られなくなった、
この森を理想郷と謳った少女の家に......。
辺りの景色はさっきとはまるで変わっていた。
さっきまでは辺り一面緑の一色だったのに、今は違った。
茜色の景色に変わっている。
なんて綺麗だろう、と思った。
まるで紅葉の季節だ、と思ったが、どこか少し寂しげな雰囲気を感じた。
誰にも知られずひっそりと景色があるように見えて少し悲しくなった。
この森は寂しいのだろうか。
こんなに美しい景色が一面に広がっているというのに、人に知られることが少ないのだから。
静寂の森に透き通った声が響く。ルークだ。
「___エリアス。どうした?さっきからずっと
考えごとしながら止まっちゃって....。」
私はまた一人で考えごとをしてしまったようだ。
ルークはもう小さな家の前に着いていた。
滑らかな木の家だ。
まるでお姫様の世界に出てくる、愉快な小人の家のようだった。
ルークは話しつつこちらへ向かってきて、私の手をそっと握った。
とたん、背筋がゾッとした。
ルークの手は氷のように冷たかったのだ。
力も最初の握手よりも弱くなっている。
「ルーク___あなた、なんでそんなに手が冷たいの?最初は普通に暖かかったじゃない.......。」
なめらかで陶器のような白い肌はまるで雪のように見える。
背景によく似合うなと思った。ルーク自体も紅葉の茜色がよく映えるな、とも。
そんなルークは困ったように笑って言った。
「そうだね。僕の手は確かに冷たい__けど君は心配しなくてもいいんだよ?さあ、エリアス。こっちにおいで?」
ルークは手招きをした。
その手に誘われるように体が無意識に動く。
ルークの思うままに体が動いたことに驚きはしなかった。もう慣れてしまっていたのだ。
術らしきものが解けて、私はそのまま倒れかかる寸前で抱き止められた。
「さ、行こうか。でも、気をつけて。彼女は結構不思議ちゃんなんだよね。面食らっちゃうかも.....。」
ルークはコンコンと古めのドアを叩いた。
すると、はーい、とふんわりとした声が聞こえてきた。
年は分からないが、かなり幼い少女のように思える。
キシ.....と古く分厚いドアが唸り声をあげた。
古いドア独特の嫌な音だった。
「いらっしゃいませ、お客さま。」
ふわり、とした声の正体は、髪が肩につかないくらいの短さに切り揃えられた黒髪の少女だった。
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