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「わぁっ――!」
空から強い風が吹き付けてくる。風に押されて思わず目を閉じると、冷たい空気が一気に体を包んだ。
そのまましばらく目をぎゅっとつぶって身構えていたけれど、いつまで経っても何も落ちてこない。
おかしいな……、確かに女の人が降ってきたはずなのに。
その代わり、まるで雪の中に体がすっぽりと埋まってしまったかのように、全身がしびれるほど冷たくなっている。
こわごわ目を開けてみると、いつの間にか、ぼくはあおむけに倒れていた――、女の人に抱きしめられて。
ぼくを包むその人の体は、普通の人間と同じように柔らかな手ごたえはあったものの、空気を抱いているように軽くて、生き物なら当然持っているはずのぬくもりがまるで感じられなかった。それどころか、その肌は氷のように冷たい。そのひとの体から流れ出る冷たい空気が直接伝わってきて、こっちの体がどんどん冷やされていく。
「さ、さむ……っ!」
――六花さんが来て、凍らせられる。
とっさに、あの家訓が頭をよぎった。まさかとは思うけど、あの家訓が本当だったとすれば。この人がまさにソレで……、だとすれば、ぼくはこのまま凍らされるってこと?
経験したことがない寒さと自分の想像で体がぶるりと震えた瞬間――
「あら、あらあらあら」
鈴が鳴るような、澄んだ優しい声が聞こえた。
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