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読書感想文「人間大失格」
「あのー、黒澤くん。じつはお話ししたいことがあるんですけど……」
放課後の教室で俺を呼び止めたのは、田野愛美ちゃんというクラスメイト。
二年生に進級したときにクラス替えがあり、同じクラスになった子だ。
彼女はふたつおさげのメガネっ娘で、同級生にも丁寧語で話す、おとなしい女子の代表格。
顔を赤らめてもじもじしている。あきらかに様子がおかしい。
まさか俺、アオハルのスタートラインに立ったのか!?
「黒澤くんって、生徒会のお悩み相談やってるんですよね?」
なーんだ、告白じゃなかったのか。声をかけられたのは、俺が副生徒会長だからか。
がっかりのオーラを隠しつつ返事をする。
「ああ、いちおう俺と結奈が同級生の相談窓口になってるけど。ただ、難しい案件は上級生に相談してるよ」
「いやいや、そんなおおごとじゃないですから!」
あわてて両手を顔の前でふりふりする。でも、彼女が何らかの悩みを抱えていることは確からしい。
「まあ、男の俺だけじゃ話しづらいところもあるだろうから、結奈にも協力してもらうよ」
「あっ、ありがとうございます! でもこの相談は、ほかの誰にも言わないでくださいね……」
愛美ちゃんはいまにも泣き出しそうな顔をしていた。その表情に、これはただごとじゃないと俺は感づいた。
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