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ゆるさないさえ選択しなければ、こっちの世界でも楽しくやっていけるものだとばかり思っていた。けれど、俺が選択しなくても誰かが選択してしまうことだってある。
ゆるさないは選べる選択肢だったのだ。
あちこちから銃声と悲鳴が聞こえてくる。逃げなければ。いや、帰りたい! 元の世界に帰りたい! 強くそう願いながら喫茶店を振り返る。だが、うどん屋との間には例の路地がない。
「くそっ!」
ふざけやがって!
なにが、ゆるさないだ。
俺は……俺は、こんな世界こそ認めないし、ゆるさない!
道路を渡りアパートへと帰ろうとしたその瞬間、足もとを黒いなにかが横切っていった。黒猫だった。ハッとして振り返る。猫は確かな足取りで、喫茶店とうどん屋の間へと進んでいく。固唾をのんで見守っていると──路地が出現した。
今だ!
これで元の世界へ戻れる!
俺は猫のあとを追うようにして猛ダッシュで路地を駆け抜けた。
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