いつかの王子様が……

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 その後私は病院へ行って検査をさせられたり事情聴取をされたりと忙しかった。守が帰って来てくれたのでミクを見てもらえた。守は家で現場検証の立ち会いとかやらされたみたいだ。  実家の親から同窓会があるから連絡先を教えてくれと言われた、幼稚園の時仲良かった正義くんだったので教えてしまったけど、と電話が来た。確かにあの頃は毎日正義くんの話を家でしていた。  正義くんのこれまでの状況なども警察から聞いた。同情すべき所はいくつもあったが、だからといって犯罪は許されない。苦境を乗り越えた強い男になって現れて欲しかった。  1週間後、やっと我が家は落ち着きを取り戻した。事件後しばらく私や守から離れようとしなかったミクも幼稚園に通い始めた。それでも夜は怖いらしく寝る時は私にしがみついて「朝までどこにもいかないでね」と言う。今週は守も昼間の勤務だったので毎晩3人で川の字になって寝た。  ミクが寝付くと守はポツリと言った。 「転職する事にした」 「え? どうしたの?」 「夜家にいたいんだ。もうあんな事のないように」 「ふぅん……」  気のない返事をしてみたが内心物凄く嬉しい。守のいない家にいるとちょっとした物音やチャイムが鳴っただけでもまだ怖い。 「プロポーズした時の事覚えてる?」 「え……ああ」  「一生僕が絵美さんを守ります。名前の通りに」と守は言った。 「約束は守らなきゃね。名前の通りに」  一瞬悪寒が走った。約束。それは守るに越したことはない。でも時間とともにお互いの状況は変わる。何年も放置し色褪せた約束なんて凶器でしかない。 「約束なんてしないで。もうこりごり」 「でも……」 「守は私とミクのお守りになって。いてくれるだけで安心出来るお守りに。名前の通りにね」  私は久しぶりに安心して眠りに就いた。 〈終〉
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