いつかの王子様が……

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「もうビックリ! 幼稚園の同級生が強盗殺人で全国指名手配だって!」  夜中に帰ってきた夫の(まもる)に正義くんの事を話した。 「ふぅん……」  口数が少ない上に遅くまで働いてきて疲れている。まともな返事が返ってくるなんて期待はしていなかった。でも「ふぅん」じゃ寂しすぎる。あのニュースを観てからずっと誰かに話したくてたまらなかったのに。 「寝る」 「。おやすみなさい!」 「何か怒ってるの?」 「別に」  守は工場で働いている。1週間昼間の勤務をしたら次の1週間は夜の勤務になる二交代制だ。昼間の勤務の週は一緒に夕飯も食べられる。しかし夜の勤務になると殆どミクと顔も合わさない。今週は夜勤の週だ。朝は寝ているし夜はミクが寝てから帰ってくる。1週間娘と会わないなんて私だったら耐えられない。もっと違う仕事はないのだろうか。まあ口数の少ない人だから工場勤務が合ってるのかもしれない。家族のために頑張ってくれているのだ。我慢しなきゃ。 「行ってらっしゃい」  午後守を見送ってから娘を迎えに幼稚園に行く。そして一緒にスーパーで買い物をする。 「今日の夕飯は何が食べたい?」 「ハンバーグ!」  最近お手伝いをしてくれるようになったミク。 「パパのはわたしが作る! ハートの形にするの!」  ハンバーグをハートの形に成形するミク。あんまり会えなくてもミクはパパが大好きなようだ。
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