23人が本棚に入れています
本棚に追加
何で正義くんが私の家を知っているの? それよりも正義くんは強盗殺人を犯して逃走中のはずだ。警察に通報しなければ。でも外にいるのは本当に正義くんなのだろうか。人違いだったらどうしよう。スマホを握ったまま悩んでいた。110番通報するべきか、それとも……。
ピロン、ピロピロ……
突然スマホから着信音が流れ画面に数字が現れた。知らない番号。でもさっき掛かってきた番号。
そっとドアスコープを覗く。そこにはスマホを耳に当てた正義くんが。
「そこにいるんだろう? 絵美ちゃん。僕だよ、正義だよ」
ドアスコープからは正義くんの目だけが見える。ドアに手を当てたのかほんの少しドアが軋んだ。
「開けてくれよ。俺今困ってるんだ。助けてくれよ」
ドア1枚隔てて正義くんがいる。ニュースを見ていなかったら開けていたかもしれない。
「も、もう遅いから明日にして」
「今頼むよ。昔約束しただろ。俺たち結婚するんだよな? 迎えに来たんだ。開けてくれよ」
「私、もう結婚しちゃったから」
「何だと!」
正義くんは大声を出しドアを強く叩いた。私はびっくりして硬直してしまった。顔が冷たくなり変な汗が吹き出て来る。物凄い恐怖が襲って来た。ニュースのアナウンサーが言っていた「強盗殺人」の言葉が頭の中でグルグル回っている。
「ごめん。びっくりさせちゃった? でも俺だってびっくりしたんだ。まさか絵美ちゃんが約束破るなんて思わなかったから」
急に優しい話し方になった。でも怖い。その二面性が不安を煽る。
「旦那もそこにいるの?」
「え……」
いると言ったら逆上してドアやガラスを破って入って来るかもしれない。いないと言えば好都合だと入って来るかもしれない。どっちにしても危険だ。
最初のコメントを投稿しよう!