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私は足音を立てないように玄関を離れた。キッチンに入るとすぐさま警察に電話を掛けた。
「指名手配中の砂田正義が家に来てるんです。助けてください!」
警察と通話をしている間もチャイムは鳴らされ続けている。スマホを握る手が汗で滑りそうになる。指が小刻みに震えている。
『すぐに向かいますから、とにかく落ち着いてください。戸締まりをもう一度確認してください』
穏やかだが力強い声が聞こえてくる。
『家には他に誰がいますか?』
「私と娘の2人だけです」
『他のご家族は?』
「夫は仕事に行っていて夜中にならなければ帰って来ません」
『連絡は取れそうですか?』
「工場勤務なので携帯は身に付けてないです」
『工場なの?』
「はい。八王子精機っていう精密機器を作ってる会社です」
『そう。ならお母さん、不安だろうけどあなたが娘さんを守らなきゃいけないんだから。とにかく落ち着いて。娘さんと2人で安全だと思う場所に隠れていてください。今警察がそちらへ向かってますからね』
通話を終えた私は戸締まりの確認に家中回った。そう言えばさっき洗濯物を取り込んで鍵を掛けただろうか。不安になった私はリビングの掃き出し窓へ向かった。鍵を確認するため少しカーテンを開けた。
「ヒッ!」
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