いつかの王子様が……

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 正義くんが私を睨みつけながら近付いて来た。その時サイレンの音が聞こえた。段々近付いてくる。でも遅すぎた。どうしてもっと早く来てくれなかったんだろう。 「まさか絵美ちゃんが通報したの?」  正義くんもサイレンに気が付きチラリと窓の外を見た。 「何て女だ! それが旦那に対してする事か!」  正義くんが迫ってきた。慌てて振り向きお風呂場から逃げようとした。 「キャッ!」  さっき投げたシャンプーの蓋が外れ中身が床に流れ出てしまっていたのだろう。私は滑って転んでしまった。 「悪い事はできないな。俺から逃げる事はできないんだ。分かったか!」  正義くんは私に覆い被さって来た。 「大人しくしてれば良かったのにな」  正義くんは私の首に手を掛けた。 「絵美ちゃんが悪いんだ。約束を破って他の男と結婚なんかするから。警察なんて呼ぶから。裏切り者はゆるさない」  正義くんの指に力が入る。その指を解こうと爪を立てたが正義くんの指は痛みを感じないのかびくとも動かない。 「こ、こうやって資産家の人も殺したの?」 「いや、アイツは包丁で刺した」 「何でそんな事したの?」 「約束を破ったからだ。金返すのはいつでもいいって言っときながら急に返せって言い出したんだ。約束は守らなきゃダメだろ? 約束も守れない人間は生きてる価値なんてないだろ?」
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