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正義くんは一気に力を入れた。首に指が食い込んでくる。朦朧とする意識の向こうで玄関のチャイムが聞こえてくる。何度も何度も止む事なく聞こえてくる。警察が来たのだろう。でも玄関には鍵が掛かっている。玄関だけではない。家中全ての鍵が掛かっている。警察は家に入って来られない。さっさとガラスを割って入って来ればいいのに。私が生きている間に……。
「ママ!」
ミク! チャイムがうるさくて起きてしまったのだ。そして私がいない事に気付いて探しに来たのだろう。ミクは私の姿を見て硬直していた。
「絵美ちゃん……いや、絵美ちゃんの娘か? 絵美ちゃんの小さい頃にそっくりだ」
正義くんは私の首から手を離した。
「何て名前? 絵美ちゃんそっくりだ。可愛いね……」
ホッとしている暇はなかった。正義くんはミクに向かって歩き始めた。
「ミク逃げて!」
しかしミクは動かなかった。動けなかった。
「ミクちゃんていうの? 可愛いね。大きくなったら結婚しようか……」
瞬間私は立ち上がった。
「ミクに近付くな!!」
そうだ。わたしはミクを守らなきゃいけなかったんだ。こんな所で簡単に首を締められてる場合じゃなかったのだ。私が死んだら誰がミクを守るのだ。私しかミクを守れない。
私はシャワーヘッドを手に取り勢いよくシャワーを正義くんに掛けた。温度は一番熱くして。
「アチッ! やめろ! アチーーッ!」
「ミク、玄関開けてきて! 早く!」
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