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あなたを許さない
「え?」
リョウマは呆然とこちらを見る。私の行動がまるで理解不能と言った感じだ。
なぜそんな目で見るのか。あなたのせいなのに。今日まで私はずっとあなたのことを許してきたのよ。お箸の持ち方がおかしいことも、食べ方が汚いことも。
お酒の量が多いことも、煙草を吸うことも、パチンコをやめないことも、キャバクラにいくことも、結婚してからプレゼントをくれなくなったことも、気に入らないことがあるとすぐに機嫌が悪くなることも、脱いだものをその辺に置きっぱなしにすることも、ハンドルを握ると人格が変ることも、店員を自分より下に見ることも、私の親の扱いがぞんざいになったことも……。数え上げればきりがない。でも軽く注意こそすれ、きつく責めたことなど一度もなかったはず。
「ど……、どぼじで……」
リョウマが泡のような血と一緒に吐き出した言葉。どうして?と言ったのかしら。
どうして?
「だって、許してくれないからでしょ。ちゃんと謝ったのに」
言ってからもう一度、彼の胸に包丁を突き立てた。
あなたはいつまでもねちねちと私のことを詰り続けた。
たった一回、浮気をしただけなのに。
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