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1.2023.6.8 加筆修正
杏 side:
「遠藤のヤツ、高橋さんと結婚したいって言ってましたよ。
もしかして、もうプロポーズされました? 」
真顔の坂口さんが、真剣な表情で信じられないことを問いかけてきた。
突然の無茶振りとも言える質問に、私は彼の真意がどこにあるのか
少し面白がってでもいるのか?
目と表情からなんとか探ろうとしたけれど、ずっと見つめているわけにも
いかず、残念ながら短時間では読み切れなかった。
さっきまで和やかに会話してた彼が突然発した言葉に
私は固まる。
ここでどうしてそんな話になる?
まったく分からない。
私はこの後、彼の顔をまともに見ることができなかった。
店内のカウンター席ならいざ知らず、お互い向き合って今日は
座っていた。
私はコーヒーカップに手を延ばしたはいいけれど、なかなか
口に運ぶことができない。
何て言えばいいのか?
どんな言葉で返せばいいのだろう。
遠藤さんとは、社内で仕事関連で必要最低限しか話をしたことも
なければ個人的なメールさえしたことがない。
何故ここで彼の固有名詞が出てくるのか?
私は小さく首を振り……
「ええーっ、そうなの?
そんな話、今初めて聞いたし、眉唾ものでしょ?
それに第一付き合ってもないのにあり得ないわ」
「俺は、奴が他の奴らと話してるの側で聞きました」
「変ですね、本人が聞いてないなんて。
きっとただの冗談じゃないですか」
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