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「先輩が復讐したいのは、この男じゃないんですね」
「え?」
深爪の指で顎を擦ると、剃刀負けした肌がヒリついた。先輩の声に、微かな動揺が混じる。
「他に誰が?」
「だって可笑しいじゃないですか。先輩自身に付き纏われた事実があったって、わざわざ披露宴に嫌がらせなんかしたら取引先とは拗れるだろうし、最悪、先輩は会社にいられなくなる」
控えめに赤い唇が、何か言いかけて止まった。俺にはそれが図星のサインに見えた。
「水淵先輩が本当に復讐したいのは、許せないのは……水淵先輩自身なんじゃないですか」
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