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「あの…何が何だか…」
パニックから抜け出せない俺を尻目にグラスのワインを飲み干し、水淵先輩は鞄から出したスマホをテーブルに置いた。
仲睦まじいカップルが映る画面に指を触れ、男の顔にズームする。
「この男、知ってるわね?」
「はぁ…いや、あの…」
「知っ・て・る・わ・ね?」
「……は、はい…」
目の奥が笑ってない笑顔で問われ渋々頷くと、先輩は足を組み直してソファに背を凭れた。
「来週末、このホテルでこの男の披露宴がある。それも知ってるわよね」
何となく、ぼんやりと仄かに先が見えてきた話に、俺は再び頷いた。
俺は確かに写真の男…いや、あのカップルを知っている。
大学を出て映像製作会社に就職した俺の主な仕事は、一般のユーザー向けの映像編集。結婚式や誕生会で流す動画の製作だ。
そして、今回の依頼主こそ、あのカップルである。
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