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「無理ですよ。データで入稿するし、俺が操作して流すから擦り替えなんて言い訳もできない。それに…」
「あなたは共犯じゃない。これは脅しよ」
予想外に強い語気に顔を上げると、先輩の茶色い瞳がまっすぐに俺を見ていた。
「あなたは私に脅された。やらなければ身の保証は無かったと。私もそう話すわ、警察でも何処ででも。」
高潔さの中に気迫すら感じる態度に、息を飲んだ。その姿に、昔の記憶が蘇る。
大学の頃、俺たち映像研が世話になっていた講師がセクハラでクビになりかけた時、真っ先に抗議したのが水淵先輩だった。
単位を餌に女子学生を無理に部室へ連れ込むなんて有り得ない、そんな人ではないと。挙げ句、冤罪を晴らすと理事に啖呵を切って、被害を訴えた女子学生が交際を断られた腹いせに仕組んだ証拠を、たったの3日で探し出してみせた。
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