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「取引先で会って以降、何度も誘ってきたのよ。私のことを知らないとはいえ、〝彼女とは仕方なく結婚するだけだ〟なんて食い下がってきて…心底呆れたわ」
素材として預かっている動画や写真の中で見た、新婦の大きなお腹が脳裏を過る。平穏な馴れ初め動画のつもりで繋いでいた映像が、裏側を聞くと途端に不穏なものに思えてくる。
しかし、水淵先輩の話とはいえども、鵜呑みにするには突飛な内容だ。丸っきり疑っている訳じゃないが、俺もいっぱしの社会人として、依頼主に不利益をもたらすのは避けたい。
先輩とは逆に、思っていることがすぐに出てしまう質の俺は、余程情けない顔をしていたのだろう。水淵先輩は内ポケットから取り出したものを机上に並べて見せた。
「これが起爆剤」
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