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「はあっ、はあっ……!」
息が切れるのも構わず、俺は川沿いの道をがむしゃらに走っていた。
きらきらと光を反射する水面を眺める余裕も、朝の爽やかな空気を楽しむ余裕もない。
身体が燃えるように熱い。体中から滝のような汗が流れてくる。
時折顔を撫でる冷たい川風も俺の体温を奪い去ってはくれない。
「――うわっ」
小石につまずいて身体がよろけた。
けれど転ぶ寸前に、俺はなんとか踏ん張って体勢を立て直す。
周囲の人々が心配そうにこちらを見ているが、今はそんなこと構っていられない。
進まなければ。
俺は再び走り出す。
コンクリートを蹴る音が身体の中に響く。
呼吸が乱れて、息が苦しい。視界がチカチカと瞬いてろくに前も見えない。
膝が痛む。足首も悲鳴をあげている。太腿にはすでに力が入らなくなっていた。
これまでろくに運動してこなかった自分が恨めしい。
それでも俺は歯を食いしばって、重たい身体を無理矢理前に運ぶ。
彼女との約束を果たすために。
「……待ってろよ」
どこまでも続いているかのような川路を睨みつける。
もしかしたら彼女はこれを約束とも思っていないかもしれない。
けれど、それでも走らずにはいられなかった。
俺はまた一歩コンクリートを蹴る。
この道の先にいる彼女は、いったいどんな顔をしてるだろうか。
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