わたしのあなた

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「ごめん」 って、会えた瞬間、いきなり頭を下げられたらびっくりしちゃう。 「どぉしたの?リョウくん」 顔が見えないよ。せっかく、デートなのに。 「ちょこっと遅れたからって。絵麻(えま)はぜーんぜん、怒ってないし」 それでも、深く腰を曲げた姿勢のまま、くりかえす。 「や、えっと。その、ごめん」 「やぁだ。なんでそんなに、謝るの?」 「ちがくて。ほんと、ごめん」 リョウくんの声が、だんだんと、消え入りそうに細くなる。瞬きしながら、小首をかしげた。 「マジ?!あ、だからリョウと一緒に来なかったんだ、今日」 サヨちゃんは、高校入ってずっと仲良し。真っ赤に腫れた目で教室に現れた絵麻に驚いて、どうしたのと屋上に連れ出してくれた。 「連城梨穂子(れんじょうりほこ)ってアレか、一年の。背高くて、真っ直ぐで真っ黒の長い髪、CMみたいになびかせてさ、モデル気どりかっていうアイツ!」 「カオも美人、だよねぇ」 学校中で、ウワサになったもん。絵麻も髪は長いけど。クセがあるから、根本も毛先もフワフワ浮いて、クルクルそっぽ向いちゃう。 「毎日、いっしょうけんめいとかして、ツインテールにまとめるだけでタイヘンだよぉ」 「絵麻は、そのクルクルがいんじゃん!」 「ありがとぉ~」 リョウくんも、そう言ってくれてたんだけど、なぁ。絵麻はお菓子みたいにやわらかくて、甘い香りがする、って。 「背も低いしなぁ。リョウくんと並んでも、ちょっとコドモみたいなの」 あの子だったら、映えるだろうなぁ。 「成績もいいんだって、ね。なぁんかねぇ、こないだ、廊下ですれちがったんだけど。なぁんか、目が合った気がしたんだよねぇ、で、なぁんか、笑われたような気が、しちゃって」 もう、そのときから。だったのかなぁ。 「気強そうだから、アイツが強引に迫ったんだよきっと」 「でもでもぉ。だからって絵麻、リョウくんと別れるなんて」 イヤだよ。できないよぉ。こらえきれずに手のひらに顔を埋める。昨日、家に帰ってからずっと、夜ベッドに入ってからも、泣いたのに。まだまだ涙がわいてくる。 「そうだよ。リョウのヤツ、入学早々絵麻に告ってきたんじゃんねえ、ひとめボレしました!つって」
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