わたしのあなた

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一年前のあの日。胸がドキリと高鳴って、絵麻は運命だと思ったんだ。 「神様がね。絵麻とリョウくんを選んで、ピンクのペンで大きなハートを描いたんだよ。絵麻とリョウくんはいつもそのハートに包まれているから」 ケンカもぜんぜんしたことないし、リョウくんは絵麻のお願い、いっつも聞いてくれるし。 「世界でいちばん絵麻が好きって。絵麻も世界でいちばん、リョウくんが好き。ずっとずっと、これからもゼッタイに変わらない、って」 「うんうん」 「なのにぃ。なんでえぇ」 サヨちゃんは、絵麻が涙を流しつくすまで、頭をなでて慰めてくれた。  絵麻の隣にリョウくんがいないことが、どうしても信じられなくて。放課後、下駄箱の近くでいつものように待ち受けた。目が合うと、リョウくんはいったん顔を伏せて、友達に断りを入れる。並んで駅まで歩き始めても、なかなか言葉が出てこない。  言いたい気持ちはたくさん、胸から喉にこみあげてくるんだけど。リョウくんも黙ったまま、でも、改札に入る前に立ち止まって、振り向いた。 「ごめんな、絵麻。今日が最後な。明日からは待っててくれてももう一緒に帰れない」 その声を跳ね返すように首を振った。そんなのイヤ、そんな言葉、聞こえても受け取りたくない。 「ねぇリョウくん。ホントにダメなのかなぁ。もう、絵麻のこと、好きじゃなくなっちゃった?」 「そうじゃないよ、そんなことない、絵麻は今でもカワイイし、なんなら付き合いだしたころよりもっと。絵麻のせいじゃないんだ。絵麻はなんにも悪くない。  ただオレが。勝手に、勝手なんだよな」 ごめん。ほんとごめん。 「だからね、絵麻がね、心の整理つくまで、あの子とは付き合わない、って」 サヨちゃんと屋上でお弁当を広げた。ママが作ってくれた卵焼きは、今日もおいしそうに黄色にまかれているのにな。お箸でつまんだまま、口に運べない。 「待ってくれるんだって。いつまでかかるかわかんないよ、って言ったけど。悪いのはオレたちだから、いつまででも待つんだ、って」 「マジかー」 サヨちゃんはハムサンドを頬張った。 「それは決心固いんだね。ていうかさ、アタシも実は、リョウに詰め寄ってみたけど。ガンコだわ~」 おおげさに溜息をついて、オレンジジュースを飲み干す。 「あのさ、絵麻」 ためらいながら、口にした。
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