わたしのあなた

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「ツラいと思うけど。もうさ。次いこう、次の恋。心変わりしちゃった相手にこだわっても、いいことないから」 う。きゅっと唇を結んだ。涙がまたじわってくる。 「いいよ、泣いていいよ。泣くのも付き合うし、次の恋さがすのも付き合うよ」 「サヨちゃぁん~」 大好きー。目の縁をぬぐって、少しだけ笑えてくる。 「リョウくんの次に、だけどぉ」 「はいはい。いいけどね。ねえ絵麻。リョウはさ、いっぱい、絵麻のお願いきいてくれたんでしょ?」 「うん。絵麻はカワイイものが好きだから。デートのときも、見つけるとすぐ寄り道しちゃって。映画に遅れちゃったけど、仕方ないなって笑ってくれるし」 「うんうん」 「アイスクリームもクレープも、おいしそうなのがいっぱいあって、絵麻いつも選べないから。リョウくんが、迷ったの両方買って、分けてくれるの」 「うんうん」 ぽん、とサヨちゃんが絵麻の背中を叩いてくれた。 「今度は絵麻の番」 目を合わせて、真正面から励ましてくれる。 「好きなら、リョウのしあわせ考えなきゃ。そんで絵麻も進もう。次の恋さがそう。ね」 「うん」 そうだよ、ね。  この日の夜も、リョウくんで頭がいっぱいでよく眠れなかった。だって、カバンにつけた星形のキーホルダーも、カラバリ豊富で、絵麻はライムかイエローかターコイズか散々迷って。リョウくんに選んでもらった。絵麻に似合うのはこれ、って。  枕元のハートのクッションもリョウくんにもらったやつだよ。触りごこちフワフワで、リョウくんと想い合うしあわせが形になったみたいな、絵麻の胸はこんなピンクのハートでいっぱいだったのに。ねえリョウくん、アクセやスイーツ、洋服だってサンダルだって、 「カワイイものばっかりなんだよ」 絵麻はこれから、どうしたらいい?胸の中のピンクのハートがグレーの石に変わってゴロゴロするの。痛いよ。  一週間、考えた。  ごめんって。真剣に、たくさん謝ってくれた。  ずっとずっとずーっと、考えた。  これしかないと思った。絵麻はリョウくんが決めたとおりにする。そして――抱えたクッションに、涙が落ちる。ダメだな、絵麻これから自分で決めなきゃいけないのに。ぐらつかないうちに伝えなきゃ。日付が変わる遅い時間だったけど、思い切って電話した。 「あの。あのね。最後のお願い、聞いてくれる?」 絵麻、あの日、シュシュ見たかったの。でも、行けなかったから。傷ついて、ピンクのハートがギザギザに欠けたままだから。 「あの日のデート、やり直したいの」 楽しくして。リョウくんとのこと、ちゃんとしあわせに膨らんだピンクのハートにおさめたい。 「うん。わかった」 やっぱりリョウくんはやさしい。大好き。クッションを抱きしめた。
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