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丸一日のデートは、連城さんが不安なんだって。午後からリョウくんを迎えに来ることになっていて、それまでは二人でいられる。
あの日と同じ場所で、同じ時間に待ち合わせた。
「リョウくん、はやぁい」
絵麻も三十分前に来たのに。
「絵麻との最後の時間、一秒だってムダにするわけにはいかないから」
リョウくん。思わず腕を絡めて、初めてのデートみたいに笑顔を寄せ合った。
「どっちがいいかなぁ」
ファンシーショップで、絵麻はやっぱり迷っちゃう。
「夏も終わるし、なんかこっちの淡いパープルもキレイだよねぇ。でもこれ、ピンクのリボンもカワイイ~」
「絵麻にはこっち」
ピンクのリボンをリョウくんが選んでくれた。お店を出てすぐつけてみる。
「めっちゃ似合う」
ずっと手をつないでた。二人の指を交互に重ね合った、恋人つなぎ。弾む胸にもう片方の手を当てる。ピンクに染まった絵麻のハートが白いブラウスに浮かんできそう。
いつまでもこの瞬間が続いてほしかった。でも。終わりが来てしまう。
リョウくんは約束の場所に足を向ける。川べりを舗装して、いくつかベンチが並んだ風通しのいいくつろぎスペース。街路の歩道から短い階段を降りていく。
手前のベンチから、あの子が立ち上がってリョウくんに手を振った。長い黒髪をなびかせて。
絵麻はゼッタイ、ツインテールって。力説してたリョウくんが、絵麻も髪おろしてみたら大人っぽくなるかもよ、って、いきなり言いだしたの、一年にすごい美人がって学校中が騒がしかったとき、だったなぁ。
そっと手を離して囁く。
「振り向かないでね」
泣いちゃうから。
「うん。明日からはフツーに同級生な。オレ、絵麻のこと大好きだから。関係終わりにしたくないし」
「うん、絵麻も」
サヨナラなんて言わないよ。
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