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どこまで踏み込んでいいのか、戸惑いながら台所を覗く。きちんと片付けられている。
凪くんに何も食べさせないわけにはいかない。
ちゃんとした理由と台所の清潔さに励まされて、何か作れるものがないかと冷蔵庫を覗くと、意外に材料が詰まっていた。
店長がご飯をつくるのかな。
想像して、少し頬が緩む。
冷蔵庫には、きちんとラップがかけられたご飯が残っていた。
がさごそと鍋を探し出し、ねぎを少しだけ拝借して、おかゆをつくった。
何故だか使った証拠を残してはいけない気がして、すぐにまな板と包丁、鍋を洗って、拭いて、片付けた。
すべてが終わって、小さく息を吐いた自分に気が付いて、撫子は苦笑した。
悪いことをしたわけでもない。わたしは何をそんなに焦っているのだろう。
お盆が見当たらなかったので、片手におかゆの入ったお椀と、片手に冷蔵庫にあった冷たいミネラルウォーターを注いだコップを持って、再び二階に上がった。
少し苦労してドアを開けても、凪は起きる気配がなかった。どうしようかと悩んで、とりあえず机にお椀とコップを置く。
凪の呼吸は落ち着いていた。規則正しい寝息と胸の動きに、ひとまずほっとする。
警戒心が強そうな子が、初めて会った他人が部屋にいても、これだけ眠ってしまうのは、相当しんどいのかもしれない。
どうしよう。起こしてもいいかな。
悩んでいると、玄関の扉が開く音がした。
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