お持ち帰りはユルサナイ

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お持ち帰りはユルサナイ

 それは、まだ僕が学生だった頃、夏休みに実家へ帰省した時の出来事です……。  都会の大学へ通うために実家を離れていたのですが、同じように都会へ出ていた高校時代の友人達も帰って来ていて、僕らは久しぶりに遊ぶことにしました。  まあ、遊ぶといってもゲームをするか、カラオケに行くかぐらいの月並みなものしかなく、もっとおもしろい遊びはないものかと話し合っていると、その内に誰かが「納涼がてら心霊スポットにでも行こうぜ」と言い出したんです。  刺激を求めていたこともあり、それにはみんな、即答で大賛成でした。  特にオカルト的なものが好きというわけでもありませんでしたが、僕もそれには反対せず、あまり深くも考えずにその場のノリで友人達に同調しました。  行く先として選んだのは、地元ではそれなりに知られている山の上の廃病院。  看護婦の霊が現れるだの、車椅子に乗った入院着姿の患者に追いかけられるだのと、まあ、よくある廃病院の怪談っぽいことが云われている場所です。  僕らの家からはちょっと離れた距離にありましたが、すでに運転免許と自分の車を持っているやつがいたので、その車に乗り込んで僕らはその廃病院へと向かいました。  一緒に行ったのは僕の他に三人。仮にA、B、Cと呼ぶことにすると、そこまで親しくはないけれど車を出してくれたA、クラスで一番のお調子者だったB、僕と一番仲がよかったのがCです。  街灯もそのほとんどが壊れたまま放置され、舗装も劣化してガタガタな暗い山道を、ポップな音楽をカーステレオでかけつつ登ってゆくと、やがてそれが見えて来ました。
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