11. 官舎 ミラの部屋 朝

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 しまったぞどうするか。なんとかベッドで寝てもらわないとならない。こういう時に五体満足な健常者であれば抱き抱えてベッドに放り込むのだが、悲しいかな、五体満足の健康な成人男性だったら夜中に部屋になど入れてもらっていなかっただろう。  このシチュエーションは出張ドローンだから生まれているのである。 「起きろ、ミラ・スターリング! 敵襲だ!」  さっきまで敵と戦っていてこんなことを言うのはどうかと思ったが、音声をやや大きめにして再生する。どさくさに紛れて本名を呼んでみた。なんだかドキドキした。  やおら、彼女はむくりと起き上がった。 「緊急発進(スクランブル)?」 「そこでそのまま寝ると、虫歯菌と身体を痛くする奴らが襲いかかってくるぞ」  彼女は首をこてりと傾けた。目がほとんど開いていない。 「歯を磨く」 「あ、はい」 「ニコをお願い」  ぼん、と隣にぬいぐるみが置かれた。 「お、オーケー?」  彼女は裸足でスリッパも履かずにペタペタと洗面所に向かった。バタンとドアが閉まった。 「君のご主人最高に面白いな?」  もちろん返事はない。  思わずぬいぐるみに話しかけてしまったのは、いつも飼っている鳥に無駄に話しかけてしまう癖が蘇ったからかもしれない。  実家の鳥たちは元気にしているだろうか。寿命の長い猛禽やインコたちは十年経っても元気なはず。大好きだった文鳥が何羽か虹の橋を渡ったという話は祖父から聞いたが、他はみんな元気なはずだ。久しぶりに会いたくなった。  死んだ文鳥の中に、同じくニコという名前の白文鳥がいた。だからきっと話しかけてしまうのだ。  後数日で、ブラボーⅠとリアルタイム通信できる。久しぶりに実家に電話でもかけてみようかと思った。  しばらく待っているとラプターが重そうな足取りで戻ってきた。 「ニコとベッドで寝てくれ」 「うん」  むんず、とわし掴まれたフクロウを見送る。 「ドルフィンは?」 「ソファで寝る」 「おやすみ」 「おやすみ、ラプター」  ソファの背もたれの向こう側で、ごそごそと寝支度をする音が聞こえて、そして静かになった。零はバッテリーが30パーセントになったことを確認して飛び上がった。ベッドを確認すると、ラプターはきちんと上掛けをかぶって寝ている。  零自身も安心して充電器の上に舞い戻って眠った。
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