5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここなら誰もいないから大丈夫かな」
ついて行くまま入った教室は、普段使われてなさそうな雰囲気の教室だった。
「えーっと...それで、なんでしょう?」
彼女の名前も知らないような状況で、誰もいない教室に2人きり。これから何が起こってしまうのだろうか。
「協力してほしいことがあるんだよね」
「協力? なんでしょう?」
「私がクラスの頂点に立つための手伝いをしてほしいの」
「へ?」
彼女の言葉に、驚くしかなかった。
なにを言い出すか予想出来ずにいたが、まさかすぎる言葉だった。
「拒否権はないと思うことね。もし断るなら、貴方は華やかな学校生活を送れなくなるから」
「な、なんで転校した初日にそんなこと言われなきゃならないの?! 俺、キミに恨まれるようなことしたっけ?」
心当たりなんてない。初めて会った女の子に、俺は何故か脅されている。
「安心して。断らなければ良いだけの話なんだから」
「手伝うとして、俺はなにをすればいいのさ?」
「豊田姫乃って女が気に入らないから、アイツの味方を全員アタシの側にする」
豊田さんって、俺が昼休みに話した人じゃないか...。
「豊田さんに恨みでもあるの?」
「あるに決まってるでしょ。アイツは、アタシから全てを奪ったのよ。テストの成績も学級委員の座も。そしてなにより、あんな性格の悪い女がクラスでトップにいるのが気に入らない」
理由が理不尽な気がするのだが...。
「納得いってなさそうな顔ね。アンタがえっちなイラスト好きなこと、みんなにバラそうかしら?」
「なっ...なんのことかな?」
なんでこの人、それを知って...!
「とぼけても無駄。アンタがTwitter開いてるの見てたけど、ずっとえっちなイラスト流れてたじゃない。しかも、いいねしまくって...変態」
休憩時間に開いてたのを見られたか...!
完全に油断していた...。
「わ、分かったから! 手伝うから、そのことは誰にも言わないでくれ...」
「よろしい。じゃあ、とりあえず明日から学校でアタシと仲良くして。そうすれば、豊田は間違いなくアタシたちに目を付けるから」
「まあ、それくらいなら...」
「話はこれで終わり。とりあえず、連絡先交換して」
「ああ、はい...」
電話番号とLINEを教えてもらい、初めて名前を見た。
「イスズさん...」
「そういえば自己紹介してなかったわね。イスズアスカ。五十の鈴に明日の香りで五十鈴明日香だから。よろしく」
「ああ、よろしく...」
こうして、強引かつ謎の美少女との放課後は終わった。
最初のコメントを投稿しよう!