転校早々にこうなるとは思わなんだ

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 「ここなら誰もいないから大丈夫かな」  ついて行くまま入った教室は、普段使われてなさそうな雰囲気の教室だった。  「えーっと...それで、なんでしょう?」  彼女の名前も知らないような状況で、誰もいない教室に2人きり。これから何が起こってしまうのだろうか。  「協力してほしいことがあるんだよね」  「協力? なんでしょう?」  「私がクラスの頂点に立つための手伝いをしてほしいの」  「へ?」  彼女の言葉に、驚くしかなかった。  なにを言い出すか予想出来ずにいたが、まさかすぎる言葉だった。  「拒否権はないと思うことね。もし断るなら、貴方は華やかな学校生活を送れなくなるから」  「な、なんで転校した初日にそんなこと言われなきゃならないの?! 俺、キミに恨まれるようなことしたっけ?」  心当たりなんてない。初めて会った女の子に、俺は何故か脅されている。  「安心して。断らなければ良いだけの話なんだから」  「手伝うとして、俺はなにをすればいいのさ?」  「豊田姫乃って女が気に入らないから、アイツの味方を全員アタシの側にする」  豊田さんって、俺が昼休みに話した人じゃないか...。  「豊田さんに恨みでもあるの?」  「あるに決まってるでしょ。アイツは、アタシから全てを奪ったのよ。テストの成績も学級委員の座も。そしてなにより、あんな性格の悪い女がクラスでトップにいるのが気に入らない」  理由が理不尽な気がするのだが...。  「納得いってなさそうな顔ね。アンタがえっちなイラスト好きなこと、みんなにバラそうかしら?」  「なっ...なんのことかな?」  なんでこの人、それを知って...!  「とぼけても無駄。アンタがTwitter開いてるの見てたけど、ずっとえっちなイラスト流れてたじゃない。しかも、いいねしまくって...変態」  休憩時間に開いてたのを見られたか...!  完全に油断していた...。  「わ、分かったから! 手伝うから、そのことは誰にも言わないでくれ...」  「よろしい。じゃあ、とりあえず明日から学校でアタシと仲良くして。そうすれば、豊田は間違いなくアタシたちに目を付けるから」  「まあ、それくらいなら...」  「話はこれで終わり。とりあえず、連絡先交換して」  「ああ、はい...」  電話番号とLINEを教えてもらい、初めて名前を見た。  「イスズさん...」  「そういえば自己紹介してなかったわね。イスズアスカ。五十の鈴に明日の香りで五十鈴明日香だから。よろしく」  「ああ、よろしく...」  こうして、強引かつ謎の美少女との放課後は終わった。
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