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ずっとひとりぼっちじゃなかった大人
──昔の夢を見た。
目を覚ます。
時計の針はかなり進んでしまっている。
長い時間眠ってしまったようだ。
ロロはソファから体を起こす。
朝見ていたニュース番組は、とっくに終わってしまい、違うものに切り替わっている。
ロロは伸びをすると、煙草をつけて、咥えたまま立ち上がった。
キッチンへ行き、コーヒーをいれる。窓を開けて窓辺に腰掛けながら、煙草を吸った。
外はチョコレートが降っている。
雨のように降ってくるわけでもなく、優しくゆっくり、世界中に降り注いでいる。
忘れては、毎年この魔法みたいな日がくる度に思い出す。
また忘れて、また思い出す。
不思議な森を一緒に歩いた、チョコレートみたいな少女のことを。
──チョコレートの日、それもチョコレートが降り始める時間に産まれたなんて。まるで世界中に降ってくるチョコレートは、ロロ、お前のためのものみたいだ。
「……俺''たち''のためのチョコレートなんだよ。父さん、母さん。」
忘れないって、約束を守るための。
窓の外へ手を伸ばした。
手のひらにゆっくりと落ちてきたひとつのチョコレートをそのまま食べる。口の中に甘みが優しく広がっていった。
ロロは、ふっと笑って空を見上げると、再び手を外に伸ばして呟いた。
「……今日は晴れのちチャコレート。」
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