出会い

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どうしよう。 森の中で、少女は頭の中でもう何度もそう繰り返していた。目の前には倒れ込んだ少年。こんな森のど真ん中で、人が、それも自分と同じくらいの歳の子が倒れている。眠っているだけのようだが、それでも、どうしてこんな場所に? 少女は、少年をそのままにしておくこともできず、少年のそばで長く悩んでいた。 「……どうしよう。」 そう呟いた時、ちょうど少年がみじろいだ。 「……ぅーん…。」 少女は驚いて、少し距離をとる。 少年が目を覚ました。 「……ん……あれ?……ここは、……。」 少年が目を擦りながら起き上がった。まだ覚醒しきっていないまま周囲を見渡し、少し離れたところにいる少女に目をとめた。 「……あれ?……お前、だれだ?……ていうか、ここどこだよ。」 しどろもどろになりながらも、少女が答える。 「…こ、ここは、フクロウの森だよ…。きみこそ、誰?どうやってこの森に入ってきたの?」 きみも、、願いを叶えに来たの? そう続ける少女に、少年は訝しげな顔をした。よく見れば、少女は見慣れない格好をしている。 「お前、何言ってんだ?願いってなんのことだよ。そもそも、フクロウの森ってどこだよ。」 「どこって言われても、フクロウの森、としか……。」 口ごもる少女に、少年が再びたずねた。 「……おれ、家に帰らなきゃ。ここがどこかも分からないなんて、どうすりゃいいんだ。なぁ、おまえ、見たことない格好してるし、ここ、外国だったりする?」 「……わ、わたしにそんなこと、言われ、ても……きみが、どこから来たのかもわかんないし…。」 「…まぁ、それもそっか…。俺、グレイの都に住んでるんだ。家で昼寝してたはずなんだけど、目が覚めたらここにいてさ。」 「………グレイの都?…そんなところ聞いた事ないけど…。」 「ええ!?うそだろ?希望の大陸で1番大きな都市だぜ?!」 ほんとに知らないのかよ!という少年の大声に少女は、ビクッとしながら答えた。 「ほ、ほんとに知らないよ……。そんな、希望の大陸?っていうのも、聞いた事、ない……。」 「……ま、まじかよ。……どこにいるんだよ、おれ…。」 力なくつぶやく少年に、しばらくして、少女が恐る恐る声をかける。 「……きみが、どこから来たのかは、よく分からない……けど……。」 「………けど?」 「……帰る方法なら、教えてあげられる……かもしれない……。」 「ほんとか?!」 一気に近づいてきた少年に、圧倒されながらも少女は頷いた。 「う、うん。帰れる、かも、しれないだけど……。」 「いいさ!なんも分かんないよりずっといいよ!」 で、どうやったらいい?と少年が問いかける。 少し迷う素振りを見せながらも、少女が答える。 「……この、フクロウの森を抜けた先に、願いの泉って場所があって……。その泉に住む妖精が、なんでもひとつ、願いを叶えてくれるんだって。……それで、わたし、ちょうど願いの泉に行こうと思ってて……その、……一緒に、行く?」 「……(願い……さっきもそんなこと言ってたな。でも…)その、妖精の話ってほんとか?ものすっっっごい昔は、たくさん色んな場所にいたって話だけど、今は滅んじゃったかもしれないって聞いてるぜ?」 「ほ、ほんとだよ!た、確かに、昔より見なくなったかもだけど、妖精は、滅んでないし確かにいるよ!」 訝しげな顔をしながら、少年は考えた。妖精という存在は、はるか昔には、確かに存在したものらしいが、もう長い間全くと言っていいほどその姿を確認することはできないはずだ。もう滅んでしまったのだろう、という説が有力になるほどである。願いの泉、妖精。少女の話は、少年にとってどうも信じがたいものばかりであったが、自分の置かれた状況が全く分からない彼にとって、今頼れるのは、目の前の少女だけだった。 (……悪い奴には、見えないし。フクロウの森?だっけ。妖精のいる泉はこの森を抜けた先だって言ってたよな…。じゃあ、ここからそんなに遠くないのかな…?) 「……分かった。まだよくわかんないけど、とりあえず信じるよ。お前のこと。おれも泉へ連れてってくれ!」 ずいっと少年が少女に向かって手を差し出した。 「おれはロロ。お前の名前は?」 少女が、戸惑いながら少年の手を握って答えた。 「……チャコレ…。わたしの名前はチャコレっていうの。」
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