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星はまず、今回の諸悪の根源である川尻千春に自分の気持ちを伝えることにした。
これ以上自分の知らないところで何か起こらないように。
学生があまり使わない方のファミレスに川尻を呼び出した星は単刀直入に彼女に伝えた。
「突然呼び出して悪い。俺、星キミのことが好きだから今後は村上や君達と一緒に出かけることはできない。もちろん川尻と2人で出かけることは今後一切できないから」
川尻は血相を変えて訴えてきた。
「どうして? 星君がキミちゃん好きなことと私と出かけられないことは関係ないでしょ」
星はどう言えば川尻が納得してくれるのか考えた。だが何を言った所で彼女は納得しないことも心のどかでは分かっていた。
「自分の心に嘘をつきたくないんだ。もう2年近く片思いしてるしね。悪いけどもう俺の邪魔はしないでくれ」
本音を告げたことで川尻が目を丸くして星を見ていた。
星も目を逸らさずに川尻を半分睨むような目で見ていた。
「もし振られたらどうするの?」
「それでも友達としてでも彼女の側にいるよ。後悔したくはないからね」
「私が星君のことを好きだと言っても?」
その言葉に星は迷うことなく断言した。
「悪いけど川尻の思いには応えられない」
「キミちゃんのどこがそんなにいいの?」
星は何を伝えたものかと考えた。
「沢山あるけど、可愛いのにそれを鼻にかけないところとか、自分のことより人のことを優先できるところとか、かな」
「…………」
「話はそれだけだから。じゃあ俺は先に帰るよ」
星は立ち上がると会計を済ませてファミレスを出て行った。
残された川尻が呆然としていると、今度は目の前に霧崎舞香がやって来た。
それに気づいた川尻は霧崎を睨みつけた。
「あなたね、星君に余計なことを言ったのは」
「さあどうかしら。そうだとしてもあなたと同じことをしただけでしょ。キミちゃんの優しさに漬け込むのはもうやめてね。それと嫌がらせしようとか思わない方がいいわよ。誰が見てるか分からないんだから、ね」
「知ったようなこと言わないでよ」
「はいはい、これ以上邪魔されると困るから駅まで一緒に行くわよ」
そして2人は店を出た。それはまるで霧崎が川尻の行動を監視しているかのようだった。
川尻は渋々霧崎の後ろを連行されるように駅まで歩いて行ったのだった。
その後、星は星名公佳に猛アタックを繰り返した。まるで人が変わったように。
「俺が好きなのは星キミだけだから。俺を信じてくれ。川尻に何か言われたみたいだけど俺のことだけ信じてくれ」
星名公佳は憎からず思っていた星には、川尻との方がお似合いなのではないかと思っていた。
しかし本人から幾度となく熱烈な告白じみた言葉を聞かされ続けているうちに、とうとう彼の押しに負けてしまったのだった。
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