みんな頑張って

　みんな頑張っているな。小学生時代からがんばることを意識し始めたのだがこのがんばるということはやっかいだった。少しテストの点数がよくなると話題になる。野球部で活躍しても話題にならないのに変な奴（と彼は決めつけている)、から嫌味を言われたような気がする時もあった。
　小学生時代の傷を文字通り引きずっていた。蹴りを入れられたのだ。サッカーの試合中に蹴りを足に入れられたのだ。そいつは忘れているかもしれないが彼は覚えていたのであった。
　彼は中学生時代にサッカーをしたくても出来なかった。むかつく、ゆるさない、そのくせ中学生になってから彼はバレーボール部長をしていた。
　彼は誰をゆるさないのだろうかと自分でも謎だった。
　それも許せない要素だったのだ、嫌味はだめだ。
　彼は妄想が入っているのに気が付くが妄想パワーで突っ走ってしまえ。ゆるせない、と思っていたが許さないのだ。
　とにかくゆるさない。ではなくとにかくゆるさないのだ。何が理由でゆるさないのかわからなくなってきた。あいつは不良で悪人だ。ところで誰をゆるさないのだろう？　とにかくゆるさないのだ。彼は自分でも誰をゆるさないのかわからないのだった。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(了)