美紀〜miki〜(メグ)✖️〜eita〜栄太

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美紀〜miki〜(メグ)✖️〜eita〜栄太

「メグさん出勤増やしてもらえないかな?」  着替えを終えて帰りの挨拶を済ませると、店長が乾いた笑顔をこちらに向ける。 「人足りないんすか?」  訊き返すと、店長はズレてもいないメガネを中指で直した。 「いや、メグさん人気だから増やしてもらえるとこっちとしても助かるんだよね」  週に四日、夜の労働。それに見合うだけの金はもう十分に貰っていた。生活費はもちろん多少の贅沢をしても余りあるくらいには。 「いやーちょっと考えときます」 「頼むよ。月末だけでもちょいちょいっと入って稼いでってよ」  両手の平を合わせて拝むように言う。アタシは神様か何かかよ。心の中で毒付いて、「お疲れさまでした」と営業スマイルを残して店を後にした。  鬱陶しく点灯する看板の中央に【えんじぇる】と自分が働いている店の名が書かれているのが見えて、神様じゃなくて天使か、と一人納得する。  家へと帰る道中、深夜一時まで開いている弁当屋に寄った。いつも通り二人分の弁当を買って、家路を急いだ。  閉めたはずの部屋の鍵が開いていた。 「ただいま」  ハイヒールを脱ぎながら声を掛けると、奥から栄太が顔を出した。Tシャツにパンツ姿。アタシが出かけた時と変わらない格好に安心する。 「おかえり」  栄太がこちらに歩み寄る。お疲れさま、とアタシの頭を撫でてから触れるだけの優しいキスをする。アタシもそれに応える。もう一度しようとすると、栄太は、弁当を入れた袋をアタシの手から奪い取った。 「サンキュー。腹減って死にそうだよ」 「ねえ、鍵閉めていったはずなんだけど」 「ああ、さっきなんか届いてたぞ。またなんか買った?」  そうだった。今日は定期購入しているサプリが届く日だった。アタシが居ない間に栄太が何処かに行ったのかと疑ってしまった自分が恥ずかしい。 「今日は、唐揚げ弁当と、おおっ、カツカレーじゃん。さすが美紀、ナイスチョイス」 「待って、一つはアタシのだよ」 「おいおいこんな時間に食べると太るぜ」  そう言いながらアタシのお腹をくすぐった。客にされると粟立つような行為も、栄太なら許せる。それどころか嬉しくなって抱きしめてしまうから不思議だ。  メグではなく美紀として愛してくれるのは栄太だけ。 「やめろよ離せって」 「やだ。アタシカツカレーね」 「ちょっとくれよ」 「うん」  こんな無駄なやりとりがたまらなく好きだ。
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