責任感

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その夜はとにかく凄かった。 何と言えばいいのだろう。 例えるならばプロレス。無茶な体制で関節技を決められているような、そんなハードな運動が明け方まで続いた。 最後は気絶するように布団に倒れ込んだ。 そして夏が意識を取り戻したのは昼前だった。 玄関の扉があく音で目が覚めた。身体はぐずぐずで所々痛みがある。 体中の骨がなくなったのではないかと錯覚してしまうくらのジャバズハット状態。 「起きたか……体大丈夫?」 彼は朝ちゃんと目覚めたのだろう。買い物するために外へ出ていたようだった。 夏は頷く。重たい体を起こした。 シーツは乱れて布団はぐちゃぐちゃだ。部屋の中は荒れ放題だった。 かろうじて昨夜出た使用後のゴミはビニール袋にまとめられているようだった。 「シャワーを借りた。近くに百貨店があったからシャツとネクタイを買ってきた」 そう言って夏にデパ地下で買ってきたらしい弁当とドリンクを渡してくれた。 「ありがとうございます」 いえ、どういたしまして。と言いながら彼は新しいシャツに着替えだした。 「すまないが、これから仕事に行かなくてはならない。このシャツとネクタイ汚れたから処分してもらってもいいかな?」 「はい」 男の人がスーツに着替えるのを近くで見るのは初めてだ。 ネクタイを結ぶ姿に色気を感じる。背が高くて引き締まった体。広い肩幅、厚い胸板。昨日ずっとこの人に寝技を掛けられていたんだと思うと、自分の体力がよく持ったと褒めてやりたい気持ちになった。 彼は媚薬の入った袋と瓶を手に取った。 「これ、持って帰るよ。成分分析する。凄い効き目だったし副作用とかが気になるから」 勿論ですとコクコク頷く。 副作用ってなんだろう。一応明け方にはもう彼の下半身は落ち着いたようだった。 けど、もしかしたらずっと勃つ続けるとか?逆に勃たなくなるとか?そういう副作用があるのかもしれない。怖すぎる。 申し訳なさ過ぎて俯くしかなかった。 彼はずいッと近づいてきたかと思うと、ジャバズハットの額にキスをした。 「行くわ」 満足そうにニコッと笑うと、あっという間にドアから出ていってしまった。
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