坂下夏

2/2
前へ
/37ページ
次へ
夏の最近の困りごとは常連の川端さんというお客さんの事だった。 彼は三十半ばで仕事はアダルトグッズの営業。新しい大人のおもちゃが発売されると夏に試してみてと持ってくるようになった。 お客さんだから無下にもできず、きっぱりと「私は使いません」と断った。 しかしマスターは「試しに僕が使っちゃうかもしれませんよ」と川端さんに冗談っぽく言いながら、頂いておきなさいと夏に言った。 「まぁ、もらうだけもらってよ。今度の凄いんだ相手をその気にさせるスーパーデラックス媚薬」 川端さんはニコニコしながら夏に袋を差し出した。 惚れ薬?精力剤?頂くのは良いんだけど…… 今までにも沢山頂き過ぎて、夏の部屋には川端ボックスなるものが存在し、あらゆる大人グッズが目いっぱい溢れそうになっていた。 「……なんだかそれ、体に有害な気しかしないんですが」 「大丈夫ちゃんと試験済みのやつだし、今度新しく発売される時は販売価格は1本1万超高級品ドリンク」 夏は笑いながら、可愛い袋に入ったその怪しい飲み物を受け取った。 お客さんのプレゼントはよほど高額なもの以外は喜んで受け取ってといわれてるが、体に入るものは流石に恐ろしくて間違いなく使わないだろうと思った。 使用後の感想を求められることはないが、いつか二人で試そうねと川端さんから必ず言われるので、その都度苦笑いをしてしまう。 「ありがとうございます。もう1杯飲まれますか?」 「冷たいな……まぁ、高嶺の花だからねそのクールさも魅力だよ」 いくら冷たくあしらっても、店に通い続けてくれているので、このプレゼントに困ってはいるが川端さんは上客だった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

269人が本棚に入れています
本棚に追加