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最後の戦い 笹野side
最近は、屋内用として設置される防犯カメラがある。見守りカメラでは、自動追跡、首振り機能、双方向会話などの機能がついたカメラもあり録画も勿論できる。
夏は自分の記憶がまた24歳に戻ってしまうことを何より恐れていた。どのような事がきっかけで、それが起こるのか自分で確認したいと言った。
俺が家に居ないときに、急にリターンしてしまったら、その時の状況を自分の目で確認する術として、防犯カメラを設置することを願いでたのだ。
矛盾したことを言い出した場合に自分を納得させる材料としてもそれは役立つと。
けれどまさか、こんな状況でこのカメラを利用するとは思ってもいなかった。
笹野は、東京駅からタクシーに乗って取引先の会社へ移動中だった。夏がちゃんと木下に会って病院へ行くか確認するため、スマートフォンでタイムリーに映像を見ていた。
そこにはソファーから落ち、倒れ込んだ夏を冷静に見下ろす木下の姿が映っていた。
いったい何が起こっているのか、スマートフォンの画面をただ凝視していた。
木下がブランケットを広げ、その上にまるで荷物のように夏を転がしたのを見た途端、顔面蒼白になり、頭の中は完全に飛んでしまった。
木下はブランケットの端を持つと、そのまま夏を引きずりバスルームの方へ向かっていった。
次の瞬間座席から飛び上がると、スマホで110番通報した。警察に説明するのに手間取る。
タクシーの運転手に車を停車するように伝え、一番早く自分のマンションの部屋へ来れるであろう管理会社のコンシェルジュと警備にも連絡を入れる。
なんとか木下を止めなければ、妻の命が危ない。スマートフォンの映像を確認する。木下は自分ひとりでバスルームへ入っていった。夏はブランケットの上に寝ているが生きているのか確認できない。
そしてバスルームから戻ってくると、スマホの中で木下は夏の洋服を脱がし始めたのだった。
風呂に……まさか、風呂に沈めるのか?恐ろしい考えが頭をよぎる。
木下のスマホに電話をかける。
「…………この電話は……」
電源が入っていないメッセージが流れる。
くそっ!自分はなぜ今東京にいるんだ!と悪態をつくと、一刻も早く神戸に戻らなくてはと、駅に向かうよう運転手に告げた。だが、すぐさま考え直し、一番近い警察署へ行ってくれるよう頼んだ。
距離はどうしても縮まらない。しかし一刻を争う事態だ。
警察署へ着くと笹野は、そのまま乗車賃も払わずタクシーを降りてスマホを掲げながら警察署の中へ飛び込んだ。
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