出会い

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そこが休憩室ではなく、個人の自宅だと気づき申し訳なさそうに「すまない」ともう一度彼は言った。 スーツの上を脱がせてネクタイをほどきシャツのボタンを開ける。ベッドに横になってもらって、タオルを絞って彼に渡し、ペットボトルの水を差しだした。 「あの、バスルームはすぐそこです自由に使って下さい。お水をたくさん飲んで吐きたくなったら全部吐き出してください」 もう思う存分吐いてくれと思った。 胃の中を空っぽにしたら少しは症状も和らぐだろう。 顔面蒼白になっているであろう自分の表情を悟られないように必死に介抱した。 店の戸締まりをしなくてはいけない。媚薬の取説もまだ店の中だ。彼を部屋に残して夏は急いで店まで戻った。 やっぱり何か変なものが入ってたんだ。 どうしよう……夏は店の中で媚薬の使用上の注意を読んだ。 効果は性欲増進・精子量の増量、勃起力向上。成分は亜鉛、マカやニンニク……特に問題はなさそうだ。聞いたことのない横文字の物質も入っているが…… 24時間勃起状態が続くとか、30㎝まで大きくなった人がいるらしい。使用者の声を読んでみると、みんなが満足しているという事はわかった。 大げさな宣伝文句ばかりが目につくが、その怪しい媚薬を飲ませてしまったのは自分。とにかく責任は自分にある。 どんな様子か見るのも恐ろしいが、夏は部屋に戻るしかなかった。
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