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「なるほど、プロ野球選手、ね」
「このあいだのCS第二ステージでも投げてたでしょう、小林穂高」
あの時は□□□の四番をワンポイントリリーフで三振に切って取った、などと楽しそうに語る前田巡査だが、要するに、物理学者とその大家が所轄の担当地域ではそこそこ知られているという話だった。
シーズン終了でラジオを仕舞う、なるほど、と鷹司にもようやく合点がいった。
「俺はフットボール派でな」
サッカーとラグビーなら見るが、と言う鷹司に「それは残念です……」と前田が眉尻を下げている。
この所轄には、古都にありがちな寺院以外に、某野球強豪校のグラウンドがあり、現場である山科青年の住まう小林家はその近所にあった。
それなりの敷地に豪勢ではないが端正な家屋があるが、たしかに監視カメラ等は見受けられない。周囲もごく平凡な住宅街で人通りも少ない。これは目撃証言も期待薄だな、と鷹司がまた溜息を吐いたところで、目的地に到着した。
なお、小林家には正しく盗聴器が三つ仕掛けてあった。
外して直ぐ検証する手もあるが、ここまで山科が温存してくれていたことを利用し、そのまま捜査を開始することにした。捜査を恐れた容疑者に雲隠れされてはまず見つからない。
素早く外堀を埋めてあぶり出す、と鷹司は改めて拳を握り締めた。
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