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「ここだっけな」
男は適当に目星をつけた所で足を止め、キーに付けられたボタンを押した。少しくらいの距離であれば車が反応し、ドアのロックを解除してくれる。だが反応はない。とすると、もう少し奥まったところに停めたのだったか。
量販車であっても長いこと乗っていれば何となく見分けがつくはずだが、今日はやけに同じ車ばかり停まっている。不思議に思いながら男は車と車の狭間に足を踏み入れた。またも水たまりがあり、足を取られそうになる。
「ああ、うぜえ」
誰のものかも知らぬ車に手をつき、キーのボタンを押すと一台挟んだ先の車からドアの鍵が開く音がした。車体のライトが点灯して辺りを照らし、自分の車だとわかった。
男はようやく見つけた愛車に駆け寄ると、隣の車にぶつからないように少しだけドアを開け、体を滑り込ませた。だが何故だろう。ドライバーであれば当然のように運転席に座るはず……にも関わらず、男は反対の助手席側から乗った。我ながら何をしているんだと運転席に身を移そうとして、固まってしまった。
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