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そいつはどうやら中学校の同級生で、幼馴染らしい。まあ、まあまあ、中学生なら、興味本位であるかもしれない。いや無いだろう。思わず目を瞑ると、テーブルフラワーやら乾杯用のワインの甘いアルコール臭やらが、ずいと迫ってきて酔いそうだった。
目を開けて、焦点の合わない視界のまま猿のコールで俺は「乾杯」と声をあげた。
しゃらくさいオードブルが運ばれて、懇談タイムの開始を告げる。
猿とは話したくない。だが押し黙ってつまらなさげに食べる様を晒すのも嫌である。主賓席らしく歓談をして場を明るくするのが、ゲストとしての俺の役割なのだ。
だから左隣の男が話しかけてきたときに、心から安堵した。そのまま無防備に話に乗ってしまった。
「きみは桜木くんとどういう関係?」
男はこのテーブルの中ではかなり年上のようだった。
「大学時代の友達です」
「僕は彼が高校生のときの家庭教師だったんだ」
「そうなんですね。家庭教師の方で結婚式に呼ばれるというのは、すごいですね」
「そう意外にも思っていないんじゃない?」
ワインに口をつけながら、男は俺を不躾なほど眺め回した。マナー通りのスーツに身を包んだ俺をだ。それなりに高かったが、男のスーツは一見して分かるほど良質で、俺の着ているものより高価に違いなかった。
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