胸糞ピエロのからさわぎ

10/12
前へ
/12ページ
次へ
 そいつはどうやら中学校の同級生で、幼馴染らしい。まあ、まあまあ、中学生なら、興味本位であるかもしれない。いや無いだろう。思わず目を瞑ると、テーブルフラワーやら乾杯用のワインの甘いアルコール臭やらが、ずいと迫ってきて酔いそうだった。  目を開けて、焦点の合わない視界のまま猿のコールで俺は「乾杯」と声をあげた。  しゃらくさいオードブルが運ばれて、懇談タイムの開始を告げる。  猿とは話したくない。だが押し黙ってつまらなさげに食べる様を晒すのも嫌である。主賓席らしく歓談をして場を明るくするのが、ゲストとしての俺の役割なのだ。  だから左隣の男が話しかけてきたときに、心から安堵した。そのまま無防備に話に乗ってしまった。 「きみは桜木くんとどういう関係?」  男はこのテーブルの中ではかなり年上のようだった。 「大学時代の友達です」 「僕は彼が高校生のときの家庭教師だったんだ」 「そうなんですね。家庭教師の方で結婚式に呼ばれるというのは、すごいですね」 「そう意外にも思っていないんじゃない?」  ワインに口をつけながら、男は俺を不躾なほど眺め回した。マナー通りのスーツに身を包んだ俺をだ。それなりに高かったが、男のスーツは一見して分かるほど良質で、俺の着ているものより高価に違いなかった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加