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飲みの席で俺は太陽に告られたことを暴露してやった。
真実の吐露であり、俺は悪くない。俺だけで抱えきれない負い目を負わせておいて普段どおりにしているサイコパス太陽が悪い。なにが太陽だ。桜木太陽なんて主人公みたいな名前とツラして、とんだ食わせもんだ。
「俺このまえ太陽に告られてさー」
乾杯して即、切り出した。
「告るってあの告る? 好きとか嫌いの好きの告る?」
いつだってノリのいい鳥居が、鳥居らしく乗ってくる。
「その告るだよ。それで断るじゃん。気まずくなるかなとか、言い方が良くなかったかとか、俺としては一晩悩んだわけよ。いつもの感じにもう戻れないのかなとか。そしたらこいつケロっとしてんの。逆に寂しいまであるわ」
「寂しいってお前が片想い側みたいじゃん!」
笑いにしてくれる鳥居は助かる。いい仕事をしている。だが一緒に笑う太陽は不気味だ。
「マジ? 俺魔性ムーブしてた? ごめんなー、俺って言っちゃえばすっきりするタイプでさ。今から想われても無理だから」
「ひでー!」
鳥居そのとおりだよ。ひでー! だよ。だから俺も合わせてひでー! と笑うしかない。そういう立場に追いやられている。なんて残酷なことをするんだ。
「ていうか付き合ってるかと思ったわ。仲良しじゃん」
「それ言ったら俺とお前も付き合えんの? 仲良しだけど」
話を広げようとする鳥居の、ものを考えない、ノリで生きているところは便利でもあるがそろそろしつこくも感じてきた。だから俺はジョークで返した。ギリギリ棘を感じさせないくらいの笑いだ。
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