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「無理ー!」
即座に否定する鳥居に安堵していると、なぜか太陽がひときわ高い声で笑い出した。
「無理はひどいよな、まあ俺も言われたけど」
「言ったけど」
俺と太陽で、はは、と笑えい合えば場は丸く収まった雰囲気になる。
終始無言だった成田が就活の話を振って、愚痴大会になったところでいつもの飲み会に戻った。
まだこれからという時間帯、二次会にもなだれ込まずその日は解散した。太陽は一人暮らしで徒歩、鳥居は地下鉄、俺と成田がJRだ。JRの駅に向かう道々、俺と成田はどうでもいい話をして歩く。いつものことだ。
駅名を掲げるネオンが見えるところで、「田端さあ」と低い声で成田が切り出した。
「ああいうの良くないよ」
「ああいうのって?」
「分かるだろ、告られたとかそういうことだよ」
「それかあ」
分かるけど、なんで成田に言われなきゃいけないのかは分からない。正論マンがよ、その正論も自分が気持ちいいから言うだけだろう。
「告白された衝撃とか断った罪悪感とか、俺だけ荷物を負えってこと? 断る側の負担って想像つく? 一晩悩んでさ、もっと言い方あったかなとか、あいつと気まずくなりたくねえなとか、でも付き合うのは難しいし仕方ないよなとか、ずっと考えるんだよ。でもあいつケロっとしてるじゃん。からかわれてるの俺じゃないの?」
これが正論へのお気持ち返しだ。決まった、と思いたいが正論マンの正論は止まない。諦めろよ、俺は俺のお気持ちを表明してんだから、議論から退けよ。
「一晩なあ。お前のその一晩の前に、告る前に、どれだけ桜木が悩んだかとか、想像しないの?」
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