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「知らねえよ。なんでそこまで俺が気遣わなきゃいけないの? 同性の友達に告る側ってそこまで守られてるもんなの?」
「守る、守られるっていうのは不均衡な関係で違うんだけど、まあ田端がそれだけ悩んだ末の爆発だったってのは理解したよ。桜木が本当に気にしていないんだとしたら、俺が外野でなにか思うのも言うのもおこがましいよな」
それで改札について、俺と成田は反対のホームに行った。
いまいち腑に落ちないところもあるが、今後成田からいちゃもんを付けられはしないだろうと俺は溜飲を下げることにした。成田は中庸中の中庸人間である。喧嘩に発展しそうになれば、すかさず言葉を収める。今回はいつもよりは食い下がられたが、俺がちょっと感情的な部分を見せたところで勝ちは見えたようなものだ。
というわけでそれ以降、俺たち四人の関係は変わらず、卒業まで俺と太陽の話がネタとしても挙がることは無かった。しかし実際は、俺だけはポスト告白の世界に追放されていて、三人は告白前の世界にいる。それが狡い。衝撃の暴露をしたんだから、全員がポスト告白の世界に生きるべきなんじゃないのか。
そんな不満も、働くようになれば些事になり、忘れかけていた。
SNSだけで繋がって、年に一回程度は鳥居の号令で集まる。話題は仕事の愚痴、彼女、結婚。大人になるって穏やかなものだなと思っていた。
それを崩したのはまたしてもサイコパス太陽だ。
何の前触れもなく、結婚式の招待状が送られてきたのだ。
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