胸糞ピエロのからさわぎ

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 いや心当たりが無いでもない。  俺が元彼枠に入れられているから、迷ったのかもしれない。しかしそれはうぬぼれっぽいし、太陽がそんな殊勝、違うな、普通に恋をしていた人間のようなメンタルを持ち得るかという話だ。  常識的な人間である俺は、非常識な手順で送られた招待状に完璧に対応するべく、返信の書き方を検索する。  ご出席の「ご」を消して、出席に◯。慶んで、と上に書いて、させていただきます、と下に書く。ご住所だのご芳名だの消す敬称表現が多すぎる。空白部には、検索して出てきた見本のうち上から四番目の文章を参考にして、一言添える。  やり遂げたら、うっすら汗を書いていた。もう気の早い桜が咲き始めた頃合いで、変えないままでいる部屋着のネル素材が暑かった。式は6月、ジューンブライドというわけだ。全体的に「げえ」という気分だったので、「げえ」と言って俺はボールペンを放った。  結婚式に出席するのは初めてだが、ネットで検索すればマナーとやらを知ることは出来る。想像以上に面倒、且つスーツの新調が必要そうである。そのうえご祝儀とやらもある。とんだ出費であるが常識人である俺として、外すわけにはいかない。鳥居に連絡してみると、スーツのことなど何も分かっていないようなので説教などかまして、一緒にデパートに行きまでした。  このように気を回して無礼な友人の式をもり立てようとした俺に、太陽が何をしたか。
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